Title: Aldose reductase in the polyol pathway: A potential target for the therapeutic intervention of diabetic complications.
Abstract:最近の我が国の厚生省疫学調査によれば40才以上の10人に1.5人が糖尿病を有する.しかし最新の薬物治療によっても糖の中毒副作用,即ち糖尿病の慢性合併症の発症を完全に阻止することが出来ないのが現状である.糖尿病の慢性合併症として最も特徴的な病変は細小血管障害であることが知られている.細小血管障害は特に網膜,腎,末梢神経で組織変性を引き起こし,糖尿病の3大合併症と呼ばれる網膜症,腎症,神経症を招来する...最近の我が国の厚生省疫学調査によれば40才以上の10人に1.5人が糖尿病を有する.しかし最新の薬物治療によっても糖の中毒副作用,即ち糖尿病の慢性合併症の発症を完全に阻止することが出来ないのが現状である.糖尿病の慢性合併症として最も特徴的な病変は細小血管障害であることが知られている.細小血管障害は特に網膜,腎,末梢神経で組織変性を引き起こし,糖尿病の3大合併症と呼ばれる網膜症,腎症,神経症を招来する.しかし同時に持続的な高血糖による合併症標的器官自体の代謝異常も存在し,細小血管障害の進行と共に二重の障害が組織に加わることとなる.高血糖の持続が細小血管障害並びに組織細胞障害を誘発する機序には複数の因子が同時,或いは異なった時期に関与すると考えられる.合併症発症に関わる主要な機序としてはアルドース還元酵素を介するポリオール経路の代謝亢進(1),タンパクの非酵素的糖化(2),血管平滑筋や内皮細胞におけるβ2型プロテインキナーゼCの活性化(3,4),酸化的ストレスの亢進(5)が挙げられる.こうした因子による組織障害誘発機序の解明は糖尿病合併症の薬物療法の標的を定めるために重要である.本稿では特にアルドース還元酵素を介するポリオール経路の亢進による糖尿病合併症の発症機序を中心に,本酵素の病態生理学的意義について著者らの研究と最近の知見を紹介する.Read More